ロゴはカッコよくなっていくもの

ブランド会社にとってロゴが大切であることは言うまでもありません。ある意味、ロゴはブランドの象徴です。では、「ロゴを大切にすること」とは、どういったことでしょう。ロゴを目立たせるということでしょうか?頻繁に使うということでしょうか?ロゴデザインをおしゃれにするということでしょうか?…「ロゴマニュアルをつくり、ルール通りに使用させる」ことだと思います。もし、とりあえずロゴをつくり、なんとなく使っている状態であれば、ただちにロゴマニュアルを作ることをお勧めします。それが、ブランドを大切にするということです。
これからロゴをつくる、もしくはロゴを変えたいと思っているのであれば、あまりデザインにこだわり過ぎるのはお勧めしません。何百万円もかけて、デザイナーに発注することをお勧めしません。なぜならば、ロゴがカッコよければ売れるというわけではないからです。ナイキのロゴもスープストック東京のロゴも元手はほぼゼロ円です。ですが、一流ブランドになっています。ロゴはカッコよくなっていくものです。会社のポリシー・こだわりによって示す姿勢、企業活動によってその会社のロゴがカッコよく見えてきます。
「服がカッコいいわけではない。着ている人がカッコいい」

例えば、パタゴニアという会社があります。言わずと知れた一流のアウトドアブランドの象徴です。いくつかのアウトドアブランド会社はパタゴニアを指標として自社ブランドの礎を築いていると言ってもいいかもしれません。パタゴニアの創業者は言っています。「パタゴニアは完全に責任を果たしている会社にはなれない、しかし挑戦し続けることを諦めない。」と。「私たちは山を海を愛している。しかし、その場所を少なからず損傷させる商品を取り扱っている。それでも、少しでもその損傷を和らげる商品をつくり続ける姿勢を諦めない。」と。
パタゴニアは環境保護活動を行っています。売上1%の寄、マイバッグ持参活動、月に1度のビーチクリーン活動、阪神淡路大震災支援など…。この「環境保全に取り組む姿勢」がカッコいいのです。「最高の商品を、不必要を最小限に。」というミッションがカッコいいのです。デザインの観点から言えば、パタゴニアのロゴは普通です。特にオシャレというわけではありません。ですが、カッコよく見えてきます。デザイナーの山本耀司は言っています。「服がかっこいいわけではない。着ている人がかっこいいのだ。」会社のロゴも同じだと思います。
ロゴに込められた想いとクリアランス

ロゴをつくるときに大切なこと。それはブランドの世界観を大切にすることです。ビジョン・方向性、呼び方は様々ですが、ファンに届けたいイメージを大事にすること。オシャレ感・カッコよさは二の次です。ロゴにもストーリーが必要です。「なぜ、このロゴが生まれたのか?」、「このシンボルマークにはどういう想いが込められているのか?」を知るスタッフは驚くほど少ないです。ブランディングとは会社のファンをつくることです。そのファンに対して、ロゴの想いを伝える術を持たない状態はもったいないです。まずはその意味をスタッフ間で共有させます。ロゴストーリーをブランドマニュアルにしっかりと記し、ファンからファンへその想いが伝わる仕組みを作っておきます。
もう1つ大事なことはクリアランスをしっかりとることです。おそらく大多数の会社は単価を上げたいと思っているはずです。そのためのブランディングです。そのためにはロゴに品位を持たせすべきです。クリアランスとは「余裕」。ロゴ全体のゆとりです。ロゴタイプの文字と文字の間やシンボルマークとロゴタイプの間を詰めすぎるとロゴが安っぽく見えてしまいます。ロゴ制作はバランスを取りながら、読みやすさも考慮に入れるべきです。富裕層にいい感じに思ってもらえるためにもロゴにクリアランスを持たせたいです。
視覚的イメージの統一のために

話をもとに戻しますがロゴはデザインよりも使い方を優先します。想いが込められたロゴがなんとなく使われているのではブランディングが台無しです。タテ型?ヨコ型?英字ロゴ?カナロゴ?シンボルマークをのみの使用はOKか?ロゴタイプのみの使用はOKか?カラーパターンは?タグライン(ブランドメッセージ)付きのロゴは設定するのか?決めなければならないルールはいくつもあります。その中でも特に大事なルールは、アイソレーションと最小表示です。アイソレーションとは余白です。ロゴ周りにある程度の余白を計算して使用します。理由は、ロゴの美しさが損なわれる、別のロゴに誤解される、ロゴが目立たなくなる…などがあげられます。ロゴはその周りの余白も含めてロゴなのです。
もう1つはロゴ最小表示のルール。これはロゴの視認性の限界値を記すルールです。(デジタル版・紙版)ロゴは読めなければ意味がありません。マークが理解できなければ意味がありません。例えば、ホームページのヘッダーにタグライン付きのロゴを差し込んでいる場合、そのタグラインが読めない場合があります。これはロゴを大事にしていない、ひいてはブランドを会社を大事にしていないと言えます。スタッフの誰しもがロゴを使うことがあります。ロゴを出し惜しみする訳にもいきません。誰がどの方法でロゴを使用しても、一定の基準をクリアできるようにロゴマニュアルを設定しておきます。それにより、世間への視覚的イメージの統一が図られます。