
信頼は“人柄”から始まる
「立ち居振る舞い」というと、礼儀作法やビジネスマナーといった印象を持たれるかもしれません。しかし、工務店経営においては、もっと深い意味を持っています。それは「人としてのあり方」や「日々の行動すべてが、会社の顔になっている」ということです。ブランディングというとロゴや広告、ウェブサイトなど“見た目”の印象づくりを想像しがちですが、それらはあくまでも一部に過ぎません。実際のところ、ブランディングはつながりです。WEB広告やサイトで構築した世界観が人の「振る舞い」につながっていなければブランドは崩壊します。
お客さまが工務店を選ぶとき、何を重視しているか。それは性能やデザインがありますが、「信頼できるかどうか」は重要です。注文住宅は長期的な関係が必要な仕事です。最終的に選ばれるのは「この人なら安心できそう」と感じてもらえるかどうかがカギになります。つまり、営業トークやプレゼン資料よりも、もっと根本的な「人としての態度」が問われます。例えば、現場で挨拶ができているか。道具の置き方は丁寧か。お客さまの話をしっかり聞いているか。その一つひとつが、見られています。そしてその積み重ねが「この工務店は信頼できる」という印象をつくります。

社長の振る舞いが会社の空気を決める
工務店のブランディングにおいて最も重要なのが「社長の姿勢」です。中小規模の工務店では、社長=会社そのもの、という見られ方をされます。現場に立ち、営業にも顔を出す。そして経営判断も下す。だからこそ、社長の立ち居振る舞いが、そのまま会社の印象になるのです。もし社長がだらしない服装で現場に来れば、スタッフも緩みます。反対に、社長が日々きちんとした挨拶をし、道具の手入れを怠らず、お客さまとの接し方に細やかな配慮をしていれば、その姿勢は自然と社内全体に浸透します。つまり、立ち居振る舞いの基本は「背中を見せること」。良くも悪くも、リーダーの姿勢が基軸になります。経営者が率先して丁寧な振る舞いを見せることが、社内の空気をつくり、ひいてはお客さまからの信頼につながります。
「ブランド=人」という考え方はブランド戦略の基本です。モデルハウスに、広告デザインに、ホームページデザインに人が追いついているか?。ブランドは「振る舞い」が問われる時代、お客さまとの接客ブランディングがカギとなります。立ち居振る舞いは広告以上の“生きたブランディング”です。良い評判も悪い評判も一瞬で広がります。「○○工務店の職人さんは、現場がいつもきれいで気持ちがいい」「現場の人たちが毎朝きちんと挨拶してくれる」そういった何気ない声が、次のお客さまを呼び寄せる“最高の広告”になります。

職人さんに対する接遇も同じに
立ち居振る舞いの影響範囲は、お客さまとの関係にとどまりません。ご近所さんへの配慮、協力会社・職人さんへの態度、役所や金融機関・ファイナンシャルプランナーとのやりとり…そのすべてが“工務店の印象”を形づくっていきます。最近ではSNSやクチコミサイトの影響力も強く、「あの工務店の車がいつも住宅街でスピードを出していて危ない」といった投稿が広まると、信頼回復には時間がかかります。
一方で、「現場が終わった後、ご近所にきちんと挨拶してくれてた」という話が回れば、それもまたブランディングの一部になるのです。だからこそ、立ち居振る舞いは「仕事の時間」だけの話ではなく、「会社の外での行動すべて」が関係します。スタッフの車の運転や、休憩中の話し方ひとつまでが“見られている”ことを常に意識します。

ブランディング=見えないところの積み重ね
ブランドづくりというと「外に向けたアピール」に注目しがちです。しかし、実際のブランディングは、もっと地道で泥くさいものです。日々の掃除、報連相、時間を守ること、声のトーン、服装…そのすべてが、ブランドです。一朝一夕で結果が出ることはありません。日々の立ち居振る舞いを磨き続ければ、お客さまから「信頼される存在」になっていきます。その積み重ねこそが、工務店にとって最も強力で、最も持続可能なブランディングなのです。なりたい自分たちの姿(ブランドの世界観)から逆算し、1つ1つ身だしなみ・立ち居振る舞いのルールをつくる。それを会社全体で守っていく。それを続けていくことがブランド戦略です。
「誰かに見られているときだけ頑張る」のではなく、「見られていなくても丁寧にふるまう」。それができる人のまわりには、必ず信頼と応援が集まります。工務店のブランド力とは、派手な広告やおしゃれなパンフレットではありません。それは、あなた自身の姿勢であり、スタッフ一人ひとりの行動であり、会社全体の“空気”です。今日からできるブランディング。それは、立ち居振る舞いを見直すことから始まります。