経営者としての役割
中小工務店の社長は忙しすぎます。社長以上に会社のことを真剣に考えている人間はいないので当然といえば当然かもしれません。営業・接客・マーケティング・広告の打合せ・設計・採用広告・面談・現場管理・教育・チームワークフレーミング…など、やらなければいけないことは無限にあります。特に営業・集客方面は手が抜けません。契約しなければ経営は成り立たないのでやむを得ないことかもしれません。
それでもあえて言えば、本来の社長の役割はそれではありません。社長とは方向性を指し示し導く人であり、チームのモチベーションをコントロールする人です。それと並んで社長の重要な役割の一つに「経営戦略を立てて実行させる」があります。大手企業であれば経営企画室があって、社長のブレーンがこの役割を担うかもしれません。ですが、中小工務店の現状では難しいです。もちろん社長としても考えていない訳ではありません。問題なのはそれが偶然や思い付き、どうにもならなくなってからの行動であることです。

経営戦略会議の考え方
普段の業務からなかなか抜け出せないことも事実です。ですが、会社の発展、半永久的な存続のためには、「経営戦略を考える」ことも不可欠です。なので、あえて月に1回2時間くらいの経営戦略を考える時間をつくるというのはどうでしょうか。思いついて行うのではなく、定期的に計画的に経営戦略を遂行するということが経営戦略の成功確率を上げると思います。それが会社としての厚みではないでしょうか。
1人で考える時間でもよし、ブレーンと打合せ・会議という形でもいいと思います。また経営コンサルタントを入れて進めるのもよいと思います。いずれにせよ、通常業務ではなく、未来のために頭をひねり行動に移す業務をつくることが必要です。仮に経営戦略会議だと仮定するとアジェンダはこんな感じです。①目標対比実績及び前年対比実績(現状把握・目標達成にために)②上手くいっていることと課題(課題分析と戦略起案)③戦術への落とし込み④戦略の優先順位。…テーマは新しい試みの実践です。

問題点を分析し、仮戦略を立てる、遂行、振り返り
会社経営とは不思議なもので、全体的にうまくいっているからと言って何もやらなければ経営数字は下降していきます。うまくいっているところを残し、改善の余地があるところをテコ入れする。ここが経営戦略会議の役割だと思います。そして社長の役割だと思います。スタッフは何か新しいことを始めることに恐れを感じます。余分な業務が増えたり、慣れないやり方に変更されるかもしれないので当然かもしれません。ですが、そこも上手にバランスをとって乗り切っていくのがやはり、社長の仕事ではないでしょうか。
経営戦略とは自社の問題点・課題を分析し、取り組くむべき新規案・改善案を立てます。そこから具体的な戦術(いつから、誰が、どんなふうに、予算は、いつまでに、成果予測は)に落とし込みます。実行したら、その戦略経過も経営会議で確認していきます。中小工務店で一番できていないことが「振り返り」です。すべての経営施策が成功に終わることなどありません。

社長が経営全体を考えられる体制に
大切なのは振り返りです。いつ始まり、いつ終わったのか?目標数字は?達成結果は?どこが良かったのか?どこが悪かったのか?何が原因か?続けるのか?続けないのか?1つ1つの施策に結論をつけることで、次の施策に活きてきます。会社経営とは直感で行うものではありません。直感と思われるものも日々の経営実践の積み重ねによるものです。つまり、直感とは実践経験値なのです。だから、より多くの経営戦略を実践し、振り返り分析を確実に行うことで、より成功確率が上昇します。
日々のお客さま担当業務を続けながら、経営戦略を考えるのは容易ではありません。ですので、せめて毎月2時間だけこの時間を確保しましょう。その時間は経営戦略を考える時間でもあるし、社長が実務から離れ、経営戦略に集中できるための体制づくりのためでもあります。毎月2時間の経営会議ルーティーンは次のフェーズへの第一歩です。その時間を取ること自体が経営戦略の1つかもしれません。
